- 比喩表現とは何かを知りたい
- 自分で比喩表現を行う際のヒントを掴みたい
- 日本の作家たちの比喩表現からイメージの広がりを楽しみたい
どうもこんにちは、キノタダシ(@GtH4uTlfJ5mFvlL)です。
今回の参考文献です。
中村明氏著『比喩表現辞典』です。
比喩表現の実例8201例が収録されています。
芥川龍之介や泉鏡花など文例の作家は基本古めですが、いずれも著名な作家であることは間違いありませんので。

比喩表現のコツを掴みたい!
という向上心のある方は、ぜひ一度手に取ってみてください。
比喩とはどういう意味か

「比喩」とは、あるものをそれに似た他のものに喩える修辞法です。
文字通り「比べて喩える」わけですね。
パラソルを杖のように地面に立てたまま、真直ぐなスカートを着けた軀が棒みたいだった
安岡章太郎『海辺の光景』
たとえば、こちらの比喩表現では「パラソル」を「杖」に、「軀」を「棒」にという具合に、類似点を持つ他のものに喩えています。
一方で、元よりあった両者の類似性を活かした比喩表現──というより、作者が新たに類似を創造したと云えるような比喩も存在します。
小さくつぼんだ唇はまことに美しい蛭の輪のように滑らかで
川端康成『雪国』
なまじろく、うどんのような捩れたかおをしながら、しずかに、ふふ……と微笑った
室生犀星『愛猫抄』

こういう物の見方それ自体を開拓することも比喩の面白さの一つですね
比喩表現技法について学ぶメリット
たとえばあなたが対象Aの正式名称を知らない場合、「何かと比べて喩える能力」がないと他者にうまく伝えることができません。

うーん、正式名称知らないしなぁ。
しゃあない、諦めるか
となってしまいます。
例を挙げてみましょう。
下の画像をご覧ください。

ペットボトルの赤線で囲んだ部分を他者に伝えるとき何と表現しますか?
ペットボトルの「首」って言いません?
太い方をペットボトルの胴体に見立てているわけですね(まあ、これを読んでいる人の中にはペットボトルの部位名称に詳しいガチ勢もいるかもしれませんが)。
このように、言葉を上手く使って誰かに何かを伝えたいとき比喩は必須です。
比喩表現技法について学んでおけば、未知の対象に直面しても類似性を見出し、他者に説明することができます。
これが比喩表現技法について学ぶメリットです。
一流は例え話を使って説明する
桐生稔氏著『説明の一流、二流、三流』の中でも、前提知識がない人に説明するとき、一流は類比を使って説明するとされています。
相手の知っている似たもので例えること。
全く別のものと比較する対比とは逆の関係にあります。
たとえば年配の人から

投げ銭ってナニ?
と尋ねられた場合、

ディナーショーで渡すおひねりと同じですよ
と説明すれば一瞬で理解してもらえます。
実際、説明がわかりやすい人の話を注意して聴いてみると、例え話がかなり多いことに気づくはずです。
修辞学における比喩法の種類一覧
修辞学における比喩法の種類は、以下の通りです。
- 直喩
- 隠喩
- 諷喩
- 活喩
- 提喩
- 換喩
- 声喩
- 引喩
- 転喩
- 張喩
- 濫喩
- 字喩
- 詞喩
- 類喩

古武術の流派かな?
今回は、《直喩》《隠喩》《諷喩》《活喩》《声喩》《提喩》《換喩》の7種類に《擬人法》《擬物法》を加えた計9種類を解説します。
直喩(明喩)・隠喩(暗喩)とは
《直喩》と《隠喩》は、その性質上対比して考えると理解が早いです。
両者の違いは簡単に云うとこんな感じ。
- 直喩=比喩を意識する言葉を明示する
- 隠喩=比喩を意識する言葉を明示しない
「比喩を意識する言葉」とは「まるで」「ちょうど」「ごとし」などを指します。
より詳しい解説は下記リンク先へどうぞ。
諷喩とは
《諷喩》は、喩えるものだけを明示し、喩えられているものをそこからそれとなくイメージさせるところに特徴があります。
諷喩と隠喩の違い
たとえば、以下の例文を見てみましょう。
Aさんは本の虫だ。
これは「隠喩」です。
このとき「Aさん」が例えられているもので、「本の虫」は例えになります。
続いて、以下の例文を見てみましょう。
本の虫によると、この解釈は誤りだそうだ。
これは、「諷喩」に当たります。
「Aさん」を出さず、「本の虫」という例えのみを示しています。

もしAさんが話者と聞き手にとって共通の知り合いであれば、聞き手は「本の虫」が何を示すか推察できるでしょう
- 猿も木から落ちる
- 井の中の蛙、大海を知らず
こういった諺も原理としては諷喩に当てはまります。
「猿」と「木」、「井の中の蛙」と「大海」という喩えのみが示されており、喩えられているものは明らかになっていません。
諷喩の具体例を紹介
初めいたわり合っていた彼らは、お互いの傷をむしり合う荒々しさにもかり立てられた
佐多稲子『くれない』
先行の文脈を読めば、これが取っ組み合いの夫婦喧嘩ではなく、恨みを込めた文句をぶつけ合うという意味だと察しがつくようになっています。
また、イソップ寓話のように、作品全体が喩えとなってある考え方や教訓を示す「寓話」も諷喩のひとつであると考えられています。
以上の3類が比喩の基本形です。
活喩とは
《活喩》は、無生物を命のあるものとして扱う、あるいは非情物を有情化する修辞法です。

コレ、擬人法とどう違うん?
活喩と擬人法の違いについては、簡単に云うとこんな感じです。
- 活喩=生命のないものを生命のあるものに見立てて表現する
- 擬人法=人間以外のものを人間に見立てて表現する
より詳しい解説は、下記リンク先へどうぞ。
擬物法とは
《擬物法》は、擬人法とは逆に人間を物めかして表現する修辞法です。
擬物法の具体例を紹介
お茶も入れられないほど、枯れ落ちてしまっているはずはない。
高橋三千綱『天使を誘惑』
こちらでは母親を植物に喩えているわけですね。
声喩とは
《声喩》は、オノマトペを使って感覚的に伝えようとする修辞法です。
より詳しい解説については下記リンク先からどうぞ。
提喩・換喩とは
《提喩》と《換喩》は、その性質上対比して考えると理解が早いです。
両者の違いは簡単に云うとこんな感じ。
- 提喩=包摂関係にある二者の置き換えを意図する修辞法
- 換喩=包摂関係にない二者の置き換えを意図する修辞法
キーワードは「包摂関係」であることがわかりますね。
より詳しい解説については下記リンク先からどうぞ。
まとめ:『比喩表現辞典』に学ぶ比喩表現技法9種類

まとめると、『比喩表現辞典』に学ぶ比喩表現技法9種類は以下の通りです。
- 直喩:喩えるものと喩えられるものをはっきり区別し、比喩を意識することばを明示している。
- 隠喩:喩えるものと喩えられるものとをそれぞれ区別するが、「ようだ」「みたいだ」といった言葉は使わない。
- 諷喩:喩えるものだけを明示し、喩えられているものをそこからそれとなくイメージさせる。
- 活喩:無生物を命のあるものとして扱う、あるいは非情物を有情化する。
- 擬人法:人間以外のものを人間めかして表現する。
- 擬物法:擬人法とは逆に人間を物めかして表現する。
- 声喩:オノマトペを用いて感覚的に表現する。
- 提喩:全体と部分、主体と属性といった関係にある二者の置き換えを意図する。
- 換喩:包摂関係にない二者の置き換えを意図する。
比喩と云うと、日常会話では対象をわかりやすく伝える目的で使われることがほとんどですが、こと小説の世界では、
- 印象を深める
- 突飛なイメージを持ち込んで連想を楽しんでもらう
など、遊戯的かつ技巧的な目的で用いられています。
中には比喩でしか伝えられないからこそ比喩たり得た、極めて創造的な比喩も存在することでしょう。

今回紹介した内容が、新たな認識の発見や創造の一助となることをお祈り致しております
今回はそんな感じ。ではまた~。