【バズる文体】谷崎潤一郎『痴人の愛』に学ぶ「主観バリバリモデル」とは?

エッセイ
この記事はこんな方におすすめ
  • 「最後まで読もうかな」と思ってもらえる文章を書きたい。
  • 「この人いいな」と思ってもらえる文章を書きたい。
  • 「広めたいな」と思ってもらえる文章を書きたい。

とどのつまり「文章でバズりてぇ」と思っているあなたにおすすめです

どうも、こんにちは。キノタダシ(@GtH4uTlfJ5mFvlL)です。

今回の参考文献はこちら。

『文芸オタクの私が教えるバズる文章教室』です。

端的に説明すると「バズる文章の書き方」を教えてくれる本です。

著名な作家さんをはじめ、アイドルやインフルエンサーの文章から、著者が見つけた「読んでいて楽しい文章の法則」についてまとめられています

と云うと、文章に関するテクニックを教えてくれる本なのかな? と思われるやもしれませんが、あいにくと本書はビジネスライクなスキル重視のそれではなく──。

どうしたら読み手に楽しんでもらえるか──文芸的な目線に重きを置いた本となっております

今回は、本書にていくつも紹介されているバズる文章の型から「主観バリバリモデル」をピックアップ。

記事を読んで、他の型も知りたいなぁと興味を持った方はぜひ本書を手に取ってみてくださいませ。では、参ります~。

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谷崎潤一郎『痴人の愛』に学ぶ「主観バリバリモデル」とは?

さて、唐突ですがあなたが文章で状況を伝えるときに心がけていることは何でしょう?

もちろんレポートやビジネスメールであれば、ありのままの事実を淡々と並べた方が親切です。わかりやすいですからね。

とはいえ、文芸的な目線で見ると「わかりやすい文章こそ正義!」であると一概には云えません。

早速、谷崎潤一郎著『痴人の愛』を読んでみましょう。

私がいよいよナオミを引き取って、その「お伽噺の家」へ移ったのは、五月下旬のことでしたろう。這入って見ると思ったほどに不便でもなく、日あたりのいい屋根裏の部屋からは海が眺められ、南を向いた前の空地は花壇を造るのに都合がよく、家の近所をときどき省線の電車の通るのが暇でしたけれど、間にちょっとした田圃があるのでそれもそんなにやかましくはなく、先ずこれならば申し分のない住居でした。のみならず、何分そう云う普通の人には不適当な家でしたから、思いの外に家賃が安く、一般に物価の安いあの頃のことではありましたが、敷金なしの月々二十円というので、それも私には気に入りました。

谷崎潤一郎『痴人の愛』より

こちらは、主人公とナオミが新居に引っ越してきたばかりの描写。

下線部はすべて主人公が「どう感じているか」という部分です

ぶっちゃけ風景描写としては結構フツーですよね

そんなに迫力のある言葉がチョイスされているわけでもありません。しかし、何だか味がある。なぜか。

それは光景の一つひとつに主観が含まれているからです。

「どう感じているか」をくっつける

ここでは引っ越しではなく、引っ越しに対するポジティブな感情が描かれています。

描写が特別巧みでなくとも「どう感じているか」がくっつくだけで、文章はぐっと面白くなります

試しに主人公が引っ越しに対して、ネガティブな印象を持ったらどうなるかを書いてみましょう。

私がいよいよナオミを引き取って、その「お伽噺の家」へ移ったのは、五月下旬のことでした。這入って見るとやはり不便なところもあり直射日光の当たる屋根裏の部屋からは海くらいしか眺めるものもなく、南を向いた前の空地は狭く、花壇を造る以外に使い道はなさそうです

間にちょっとした田圃があるのでそんなにやかましくはありませんでしたが、家の近所をときどき省線の電車の通るのが暇で、不満の残る住居でした。のみならず、敷金なしの月々二十円、家賃が安いものの、一般に物価の安いあの頃のことだったのでそれも妥当で、何分そう云う普通の人には不適当な家でしたので、それも私には気に入りませんでした

この通り同じ風景描写でも、書き手の心持ち次第でイメージはまったく変わります。

「何を見ているか」を書いているようで、その実「何を感じているか」が表現されてしまうのですね。

【バズる文体】「主観バリバリモデル」を書いてみよう

Before

あの家は毎朝、まず、寝癖をつけたお父さんが犬の散歩に出かけます。次にランドセルを背負った女の子が大きな声で「行ってきます!」と言って家を出ます。最後にお母さんが、ぐずる小さな男の子をなだめながら自転車に乗せて出かけていきます。

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After

あの家は毎朝、まず、寝癖をつけたお父さんが犬の散歩に出かけます。仕事でお疲れのお父さん、偉いな。犬はすごく嬉しそう。次にランドセルを背負った女の子が大きな声で「行ってきます!」と言って家を出ます。いつも明るくて元気な子。最後にお母さんが、ぐずる小さな男の子をなだめながら自転車に乗せて出かけていきます。手は焼けるけど、息子が可愛くてしょうがないっていう感じ。微笑ましい

<Before>は、ありのままの事実をただ淡々と描写したもの。<After>は、書き手がその家族に抱いているポジティブなイメージも含めて伝えようとしたものです。

「どう感じているか」をくっつけただけで、家族一人ひとりがいきいきと感じられ、明るい気持ちで読むことができませんか?

この世界は、あなたが見たいように見えるものなのです

まとめ:「何があったのか」よりも「どう感じているか」

「主観バリバリモデル」の書き方について、まとめるとこんな感じです。

1.「なにがあったのか」を書く

スープは濃厚。麺は太めでちぢれている。

2.「どう感じたのか」を決める

美味しかった。

3.「どう感じたのか」を、出来事にくっつける

スープは濃厚なのに、スッキリしている。飲み干したくなるやつである。麺は太めでちぢれている。私の好みだ。スープとのからみも申し分ない。

状況を伝える上で大事なことは、「何があったのか」よりも「どう感じているか」を伝えること──というわけです。

今回取り上げた本『バズる文章教室』について、まだまだ紹介し切れていない部分がたくさんあります。おすすめの本なので、ぜひ読んでみてください。

今回はそんな感じ! ではまた~。

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管理人
kino tadashi

心理学と科学と妖怪学をこよなく愛する物書きの端くれ。
曲がりなりにもwebライティングで収入を得ているので、端くれの自称くらいは許されるだろうという認識でいる。
webライター、ブログ等で生計を立てるべく日々模索中。
WEBライター検定3級・校正技能検定初級取得済。
一応カクヨムgoodレビュワーらしい。

ムラサキゴテン
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