【バズるつかみ】森鷗外『雁』に学ぶ「時制変更モデル」とは?

エッセイ
この記事はこんな方におすすめ
  • 「最後まで読もうかな」と思ってもらえる文章を書きたい。
  • 「この人いいな」と思ってもらえる文章を書きたい。
  • 「広めたいな」と思ってもらえる文章を書きたい。

とどのつまり「文章でバズりてぇ」と思っているあなたにおすすめです

どうも、こんにちは。キノタダシ(@GtH4uTlfJ5mFvlL)です。

今回の参考文献はこちら。

『文芸オタクの私が教えるバズる文章教室』です。

端的に説明すると「バズる文章の書き方」を教えてくれる本です。

著名な作家さんをはじめ、アイドルやインフルエンサーの文章から、著者が見つけた「読んでいて面白い文章の法則」についてまとめられています

と云うと、文章に関するテクニックを教えてくれる本なのかな? と思われるやもしれませんが、あいにくと本書はビジネスライクなスキル重視のそれではなく──。

どうしたら読み手に楽しんでもらえるか──文芸的な目線に重きを置いた本となっております

今回は、本書にていくつも紹介されているバズる文章の型から「時制変更モデル」をピックアップ。

記事を読んで、他の型も知りたいなぁと興味を持った方はぜひ本書を手に取ってみてくださいませ。では、参ります~。

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森鷗外『雁』に学ぶ「時制変更モデル」とは?

さて、いきなりですが小説家に限らず、物書きは全員「過去型」と「未来型」の2タイプに分類されます

  • 「過去型」……心の中を探索するかのように、回想しながら書き出すタイプ
  • 「未来型」……未来を想像して、出来事や誰かの「これから」を書き出すタイプ

たとえば、夏目漱石は未来型の代表、森鴎外は過去型の代表と云って良いでしょう

そして、今回フォーカスする森鴎外は著者曰く「思い出話」の名手。

早速、森鴎外の『雁』から引き込まれる「思い出話」の書き方を学びましょう。

古い話である。僕は偶然それが明治十三年の出来事だと云うことを記憶している。どうして年をはっきり覚えているかと云うと、その頃僕は東京大学の鉄門の真向いにあった、上条と云う下宿屋に、この話の主人公と壁一つ隔てた隣同士になって住んでいたからである。その上条が明治十四年に自火で焼けた時、僕も焼け出された一人であった。その火事のあった前年の出来事だと云うことを、僕は覚えているからである

森鴎外『雁』より

これは小説『雁』の書き出しですが、いかがでしょう。何だかすぐ傍で語りかけられているような気持ちになりませんか。

もし、この文章が以下のものだったらどうでしょう。

それは明治十三年の出来事だった。その頃、僕は東京大学の鉄門の真向いにあった、上条と云う下宿屋に、この話の主人公と壁一つ隔てた隣同士になって住んでいた。その上条が明治十四年に自火で焼けた時、僕も焼け出された一人であった。その火事のあった前年の出来事だ。

こちらだと、記憶というより記録の印象が強いです。平面的な風景を見ている心地がします。

もちろん、これはこれで別段悪くはありません。ただ、森鴎外の文章の方が回想に立体感はあります。なぜなのか。

森鷗外『雁』に学ぶ「時制変更モデル」のポイント

「時制変更モデル」のポイントは以下の2つ。

  • まず「古い話」だと宣言する。
  • そして「現実の自分」から見た記憶を語る。

古い話なんだけど、僕は年月を記憶している。何故かと云うと──。

語り手は「読み手と同じ”現実”にいますよ~」「これから話すのは、現在から見た過去の出来事ですよ~」と最初に提示しているわけです

読み手のすぐ近くには、それを語る「現在の人」がいる。すると、読み手は「この語り手についていけばいいのか」と安心して物語に入り込むことができるのです。

古くは『嵐が丘』『千夜一夜物語』でも用いられた、読み手を引き込ませるための手法です

【バズるつかみ】「時制変更モデル」を書いてみよう

Before

『ごんぎつね』を習ったのは小学生の頃だった。「ごん、おまえだったのか」という台詞が印象的だった。衝撃のラストシーンとして。ただ、私は『ごんぎつね』が一体どんな話だったのか、思い出すことができない。「感動して泣いた」ということしか覚えていなかった。

こちらに「時制変更モデル」を当てはめてみるとこんな感じ。

After

私の頭の中には「ごん、おまえだったのか」という台詞が残っている。衝撃のラストシーンとして。でもたった今、気がついた。私は『ごんぎつね』が一体どんな話だったのか、まったく語ることができない。今、取り出せるのは、ただ「感動して泣いた」という記憶だけだ。

<After>の方が臨場感がありますね。

そのポイントは以下の通り。

  • まず「現在の自分」を提示している。
  • 現在の自分から見た「過去の話」として語っている。

読み手と同じ立場の人が寄り添ってくれていることで、現実味のない話も身近に感じられるのです

まとめ:向かい合わせより、隣同士のほうが親しみやすい

「時制変更モデル」の書き方について、まとめるとこんな感じです。

1.冒頭で「これは記憶だ」と理解させる

  • 古い話である。
  • あの日からちょうど10年経った。
  • ふいに思い出したことがある。

2.第一段落に「これは記憶だ」と理解できる描写を集中させる

  • 記憶している。
  • 憶えている。
  • 眼に焼きついている。

3.第二段落以降は普通に書く

※読み手の頭の中には時制のイメージができあがっているはずです。

向かい合わせより、隣同士のほうが親しみやすい

『シャーロック・ホームズ』も天才ホームズの横に凡人ワトソンという”現実”がいるから、読者は物語についていきやすいわけです。

今回取り上げた本『バズる文章教室』について、まだまだ紹介し切れていない部分がたくさんあります。おすすめの本なので、ぜひ読んでみてください。

今回はそんな感じ! ではまた~。

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管理人
kino tadashi

心理学と科学と妖怪学をこよなく愛する物書きの端くれ。
曲がりなりにもwebライティングで収入を得ているので、端くれの自称くらいは許されるだろうという認識でいる。
webライター、ブログ等で生計を立てるべく日々模索中。
WEBライター検定3級・ビジネス事務検定・校正技能検定初級取得済。

ムラサキゴテン
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