- ノベルゼロが実質廃刊に至った理由を知りたい
- ノベルゼロとサラダマックはなぜ売れなかったのか
ノベルゼロが実質廃刊に至るまでの軌跡
どうもこんにちは、キノタダシ(@GtH4uTlfJ5mFvlL)です。
ノベルゼロという名のラノベレーベルをご存知でしょうか?
まあ2019年4月を最後に新刊の発売が途絶えている、実質廃刊したも同然のレーベルなので。
ご存じありませんと云う方が圧倒的多数派なのでしょうが。
ノベルゼロのコンセプトは「大人の生き様」──カッコいい大人の生き様を描いたハードボイルドな作品が読みたい! そんな大人たちをターゲットにしたラノベレーベルでした。
──はい、カッコいい大人の生き様を求める読者層はそもそもラノベに手を出さないと思うのですがそれはという最大の疑問はさておき。
ターゲットを大人に絞っただけあって、ノベルゼロの装丁はかなり独特。
本体にカバーはついておらず、ついているのは幅広の帯のみ。
そこに作品タイトルやらイラストやらが全て集結している──というデザインでした。
思うに、

いかにもなイラストでゴチャゴチャしている表紙を見られるのが恥ずかしい!
という層に配慮したデザインなのでしょう。
事実、帯を外したときの見栄えはシックで、ぱっと見ラノベレーベルから刊行されているそれとは思えません。
喜友名トト先生(@totoq7_1992)のツイートより。
うーん、強気かつ洒脱な装丁。
ちなみに大人向けを想定していたこともあってか、文庫にしては割高な値段設定でした。
ノベルゼロの裏のコンセプト
そんな我が道を往くノベルゼロには、裏のコンセプトがありました。
それが、アンチ異世界転生。
現にノベルゼロが開催した『第1回大人が読みたいエンタメ小説コンテスト』では、異世界転生要素を含む作品を公募禁止にしていたくらいなので。
何としても異世界に転生させてなるものか──という強い意志を感じます。
一方で、当時の受賞作品にフツーにチート要素が含まれているなど、結局何を排除したかったのか、思えばこの時点からすでに信念のふわふわ感が否めないレーベルだったわけですが──。

そもそもノベルゼロの「大人の生き様」というコンセプトが、書き手にとって難しいと思うんですよね。
- 大人の生き様ってことは、成人した主人公じゃないとダメなの?
- 未成年の主人公で、大人の生き様を描くのはアリなの?
- 古き良き男性向けライト文芸を買う層が大勢いると本気で思ってるの?
みたいな(ぶっちゃけカクヨム自主企画でやれ感がすごい)

nyapoonaさんの「北のノベルゼロが死んだ」でも指摘されていましたが、「大人の男のため」という志のもと集まった精鋭というよりは、単にラノベレーベルから諸事情あって弾かれた作品が徒党を組んだ感が否めないのですよね
ちなみに後に開催された『第2回大人が読みたいエンタメ小説コンテスト』に至っては、そもそも大賞・特別賞に該当する作品がありませんでした(とはいえ、ラノベ業界において「大賞該当作なし」という事態はそれほど珍しくもなかったりしますが)。
「なぜなろう系は良くも悪くも人気を集めるのか?」が気になる人はこちら😌
ノベルゼロはなぜ売れなかったのか
さて、このノベルゼロ──読んでいる方も薄々お察しでしょうが、はっきり云って売れませんでした。
「このままではマズい!」と判断したのか、途中から流行りのラノベと似たようなテイスト──萌えや過激なエロ路線に舵を切る(初期は基本挿絵すらない仕様でしたが、この路線変更辺りから挿絵もつき始めました)のですが。
それが、

硬派なコンセプトだからついていったのに!
という貴重な層を蹴落とすかたちとなってしまい、コンセプトのふわふわ感が加速。
結局、現在の実質廃刊状態に陥ってしまったわけです。
ちなみに、そんなノベルゼロの中で恐らく一番売れたと云われている作品は鏡遊先生(@kagami_yuu)の『セックス・ファンタジー』でした。
うーん、創刊当初のコンセプトから思えば何と云う皮肉。
なお、コミカライズしている模様。ヤッタゼ٩( ᐛ )و
ノベルゼロ創刊の背景に見る理想
ただ、件のレーベル──誕生の背景にあった意図はなんとなーくわかります。
- 軟派な作品がノッている今だからこそ硬派な作品を!
- 消費される流行りものではなく、本当に面白い作品を世に広めたい!
そんなフレッシュな理想を感じずにはいられません。
同時に、読者の声を反映した部分もあるのでしょう。

今の流行りはテンプレで中身もスカスカ、もっと硬派で時流に逆らうような作品が読みたい!
というご意見はそれこそYoutubeのなろう系レビュー動画のコメント欄を覗けば、今だってなくはないわけで。
よっしゃ、じゃあご要望に応えて出したろ!! と売り出した結果、しかし残酷なまでに売れなかった。
何故なのか。
ノベルゼロの廃刊とサラダマックの失敗に見る「綺麗なウソ」
個人的に、この辺りはサラダマックの失敗と似ているなーと思っておりまして。
サラダマックというのは2006年5月にマクドナルドで発売された商品でして。
名前通り、マクドナルドにしては珍しい健康志向のメニューだったのですが、まあ先に「失敗」と述べました通り、程なくして発売終了に至りました。

いや、そもそも健康的な食事求める層がファストフード行くわけなくて草
と今だからこそツッコむことができますが、何もマクドナルド側とて単なる思いつきからサラダマックの発売に至ったわけではありません。
- ヘルシーなサラダが食べたい
- ヘルシーなメニューがないマクドナルドには行かない
といった消費者側の意見を取り入れた結果、そこまで云うなら出そうと発売に至ったわけです。
で、売れなかった。うーむ。
オチをつけるなら、お客様の意見に耳を傾けるって大事だけど、だからって鵜呑みは良くないよね、自分を良く見せるためについた綺麗なウソであるケースがあり得るもんねとかそんな感じでしょうか。

この話は、2008年に“マクドナルドっぽい商品”として発売されたクォーターパウンダーが大ヒットしたところまで含めてオチだと思う

マーケターはデータだけでなく、その裏にある人間の感情にも目を向けなければならない──ということですね(硬派なラノベが読みたい! マクドナルドでサラダが食べたい! という層もいたにはいたのでしょうが)
個人的にはノベルゼロが「このままではマズい!」とあそこで路線変更しなければ今ごろどのようなレーベルになっていたかが気になります。
どのみち同じ末路だったのでしょうか、はたして。
今回はそんな感じ。ではまた~。