- 語感力を磨きたい
- 今では使われなくなった擬態語について学びたい
どうもこんにちは、キノタダシ(@GtH4uTlfJ5mFvlL)です。
先日こんな本を読みました。
山口謠司氏著『語感力事典: 日常会話からネーミングまで』です。
その中で取り上げられていた「現代では使われなくなった擬態語」が中々に興味深かったので紹介したい次第。
今では使われていない擬態語をあえて学ぶことで、心に響く言葉を云い分ける、聞き分ける上で欠かせない「語感力」を鍛えることができるやもしれません。
ちなみに擬態語とは、
事物の状態や身振りなどの感じをそれらしく音声に喩えて表した語
を指すのですが、そこらへんもっと詳しく!! という方は下記リンク先をどうぞ。
擬態語1:しっと
動作を急速に、または強く行うことです。
ジェラシーではありません。
つらをだすほどに、すくおうすれば、くびをしっとしじめてひっこむぞ
『玉塵抄』
顔を出したら捕まえてやろうとすると、首を急に縮めて引っ込ましやがる、という意味です。
「しっと」という擬態語から、動作が素早く引き締まっている印象を受けます。
擬態語2:たっしり
江戸時代前期頃、たっぷりとものが十分にあることを「たっしり」という言葉で表現していました。
どちらにも、女な子が、御座るによって、両めい、たっしりと、あると申します
『狂言記』(粟田口)
どちらにも、女たちがいますと、両名が、たっぷりいると申しております、という意味です。
美しい女性たちがいるというのを「たっしり」という言葉で表現しています。
擬態語3:のさん
泉鏡花は、人が倒れたことをこのように表現しています。
自然に、のさんと、二階から茶の間へ素直、棒立ちに落ちたで、はあ
泉鏡花『日本橋』
大きいものが、ゆっくり落ちるさまを指す擬態語であるとも云われています。
が、明治以降の文学作品の中に用例を見つけることができません。
ただし、
此まア、油の浮いた事ちう、のさんばい
『浮世風呂』
とあるように、『浮世風呂』では「堪えられない」「我慢ならない」という意味で使われています。
鏡花の「のさん」も堪え切れず、大きな音を立ててゆっくり落ちるさまを云っているのでしょう。
擬態語4:ほやり
優しく微笑むこと、もの柔らかでなめらかであることを指す擬態語です。
空のかんばせにこやか、ふくやかにっこりほやりの笑顔は誰だア
近松門左衛門『雪女五枚羽子板』
擬態語5:ましくしゃ
しきりに瞬きをするさまを指す擬態語です。
まだ足もぬくもらず、目も合わず、ましくしゃとして居るに
『好色小柴垣』
「間」を置きつつ、「目をしょぼしょぼさせる」様子が描かれています。
まとめ:現代では使われなくなった擬態語5選

今回の内容をまとめると以下の通りです。
- しっと……動作を急速に、あるいは強く行うこと
- たっしり……たっぷりとものが十分にあること
- のさん……大きなものがゆっくり落ちていくこと
- ほやり……もの柔らかでなめらかであること
- ましくしゃ……頻りに瞬きをすること
今回紹介した擬態語をそのまま自作に用いると、恐らく十人中九人の読者を

のさん??
ましくしゃ????
と困惑させてしまいますので。
「云われてみると、この語感からはこういった印象を受けるなぁ」と、自作を彩る個性的なオノマトペを捻り出す上で、何かしらのヒントにしていただければ幸いです。
また、当然ながら本記事で取り上げた擬態語は、本書におけるほんの一部となっておりますゆえ。
もっとたくさん知りたいと興味を持たれた方は、ぜひ一度本書を手に取ってみてくださいませ。
今回はそんな感じ。ではまた~。