- 読み手をぐっと惹き込む書き出しが書きたい
- 読み手がウンザリするような書き出しを書いていないか心配
どうもこんにちは、キノタダシ(@GtH4uTlfJ5mFvlL)です。

文章の書き出しっていっつも超絶悩まない?
どう書き出したらよいかは、プロでも頭を悩ませるもの。
何よりすべてにわたる正解はないという点が曲者です。
読み手を惹き込みたいがためにあれこれ趣向を凝らした結果、かえって悲惨な仕上がりに──という経験は誰だって星の数ほどあるはず。
とはいえ、普遍的な正解がない一方、可能なら避けたい書き出しのNGパターンは確かに存在しています。
そこで今回は読み手をウンザリさせがちな書き出しのNGパターン5選を紹介。
この記事を読めばダメな書き出しの例はもちろん、読み手にわかりやすく、関心を持たれる書き出しのコツがわかります。
今回の参考文献はこちら。
高橋俊一氏著『超ベーシック すぐうまくなる書くチカラ91』です。
本書は一人ひとりが文章を書き出すことを前提に、
- 「直前の準備」
- 「書き出すときに」
- 「わかりやすくするには」
- 「もっと簡潔にするには」
- 「書き終えるときはどうするか」
といった順序で構成されています。
わかりやすい文章に仕上げるためのチェック項目は全91項目。
当然ながら、この記事でその全てを取り上げることは難しいため、私が一際「コレはいいかも」と思った項目のみにフォーカスし、紹介させてもらいます。
それ以外の項目に関しては、ぜひ一度本書を手に取って全ての内容をチェックしてみてくださいませ。
NGな書き出し1:一般論や定義から始める

◆出題テーマ「アメリカ」
アメリカとは、我が国と太平洋をはさんである南北アメリカ大陸のことであるが、多くの人が一口に言う場合はアメリカ合衆国を意味する。
幕末の黒船来航以降、第二次世界大戦や戦後の復興など歴史上も現在も日本との関係は深い。
安保条約を結んでいて国内に多数の米軍基地もあるなど、重要な国家である。
私が2年間、ボストンの大学に留学したとき……
出題テーマを説明しない
出題されたテーマの定義や一般論を辞書みたく書き出す人がいますが、これは全くの考え違いです。
普通の人が散文やエッセイを書くとき、入学・入社の作文試験などでは、出題テーマの解説から始める必要はありません。
読み手は定義や一般論を素人・市民・学生に求めていません。
ありきたりな解説よりも「あなた」自身の経験や個性をいち早く出すことが大切です。
読み手の関心を引きつけて、しっかりと読み進んでもらえます。
◆出題テーマ「アメリカ」
私は2年間、アメリカに留学した。
ボストンの大学にいたとき……
ためらわず自分を押し出して、それもエピソードから始めるのが効果的です。
見聞きしてきた事実を通じて、伝えたいことを伝え、読み手に頷いてもらいましょう。
NGな書き出し2:出題をオウム返しする

◆出題テーマ「戦争と平和」
戦争と平和について書こうと思う。
ロシアの作家・トルストイの同名小説『戦争と平和』が知られているが、戦争と平和は人類永遠の課題で、私の学部でも講義でよく取り上げられる。
戦争はどこでも悲惨で、やってはいけないことだ。
しかし、世界各地で繰り返されており、今は平和な日本も戦争の例外ではない。
読み手はすでに意識している
注意してほしいのは、題・タイトルとまったく同じ言葉で書き出さないことです。
読み手は基本題・タイトルを見て、そこから読み始めます。
書き出しが題名と同じでは、同じ言葉を続けて読まされることになります。
NG例ではタイトルとわざわざ同じ言葉で書き出しています。
読み手はすでにタイトルを知っているわけですから、

わかっとるわ
と思われてしまいます。
◆出題テーマ「戦争と平和」
ロシアの作家・トルストイの小説に『戦争と平和』がある。
どちらも人類永遠の課題で、私の学部でも講義でよく取り上げられる。
戦争はどこでも悲惨で、やってはいけないことだ。
しかし、世界各地で繰り返されており、今は平和な日本も例外ではない。
タイトルと本文を通じて、余分な語句は省きます。
さらにNG例を見ていきましょう。
◆出題テーマ「春」
春と聞いて思い出すのは小学校の入学式だ……
この「春と聞いて」は「春と出題されて」に同義です。
どうしても同じ言葉がほしい場合は、文中のできるだけ後ろに置いてください。
「小学校の入学式でこんなことがあった。春になると、いつも思い出す」
のほうがよりよいでしょう。
出題・タイトルの言葉は、それだけで読み手に強い印象を与えます。
本文中のどこかで、特に最後のまとめで使うと効果的な場合もありますが、書き出しからタイトルと同じ言葉をダブって使わないようにしてください。
NGな書き出し3:書き出しの一文が長すぎる

メロスは政治がわからず、父も母もなく女房もいない村の牧人で、笛を吹き、羊と遊んで暮して来たが、邪悪に対しては人一倍だったので、必ずかの邪知暴虐の王を除かなければならぬと決意して激怒し、きょう未明に村を出発し、野を越え山越え、十里はなれたこのシラクスの市にやって来た。……
太宰治作『走れメロス』の書き出しを例文に仕立ててみました。
以下、「改善文」として原作からの引用です。
メロスは激怒した。必ずかの邪知暴虐の王を除かなければならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては人一倍に敏感であった。きょう未明メロスは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれたこのシラクスの市にやって来た。メロスには父も、母もない。女房もない。……
ズバリ言い切って勢いをつける
原作は一つひとつの文に詰め込み過ぎず、短文でまとめていることがわかります。
書き出しの一文が特に短く、ズバリと言い切ります。
読み手の心をとらえて、最後まで読んでもらう勢いをつけられるかどうかが、ここで決まります。
読み手はまだ本調子ではありません。
下手をすると、最初の一文だけで読むのをやめてしまうかもしれません。
ほとんどの人にとって間違いない書き出し、それは短文で、きっぱり言い切ることです。
「5W1Hで書かなければ」という思い込みにとらわれる必要はありません。
【文豪に学ぶ】情景が浮かぶような書き出し
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。
川端康成作『雪国』
いきなり白一色の世界が開けます。
山、暗いトンネルの先、そして里の冬景色など、こうした風景がパッパッと読み手の頭に浮かびます。
何十字も費やして風景を細かく描写するよりも、よほど効果的です。
木曾路はすべて山の中だった。
島崎藤村作『夜明け前』
これだけです。
ああだ、こうだと書かずとも、この一文で街道、山、そこを行く人の姿までがイメージされます。
これらに共通するのは──
- 書き出しは短く、端的に
- 5W1Hをいっぺんに詰め込もうとしない
- 読み手の想像力を刺激し、「何かな」と思わせる
長い書き出しも、とくに海外の小説やエッセイにはあります。
しかし、これから文章を書こうという人には不向きです。
短文のほうが、迷いに陥る確率も少なく、修正もすぐにできます。
歯切れよく書き出しましょう。
NGな書き出し4:主役の登場が遅い

「歴女」と呼ばれるぐらい歴史好きの私は、聖徳太子の知的なイメージや清少納言の才女ぶりに憧れています。
北条政子の熱い恋がうらやましい。
明治維新に最後まで抵抗した土方歳三の男らしさは感涙ものです。
これからも調べて楽しむつもりです。
一番素晴らしいと思ったのは織田信長で、ほかにはないスケールと革新性に私が初めて感激したのは……
中心人物が存在しないドラマでは?
文章には中心人物や主題があります。
それが中々出ないで前置きばかりが長いと、読み手はいらいらします。
イメージが固まらず、全体の輪郭もはっきりしません。
主役がいつまで経っても登場しないドラマと同じです。
中心テーマや人物をできるだけ早く、ときには最初から出しましょう。
「歴女」と呼ばれるぐらい歴史好きの私が一番素晴らしいと思ったのは織田信長で、ほかにはないスケールと革新性に私が初めて感激したのは……
聖徳太子の知的なイメージや清少納言の才女ぶりにも憧れています。
北条政子の熱い恋がうらやましい。
明治維新に最後まで抵抗した土方歳三の男らしさは感涙ものです。
これからも調べて楽しむつもりです。
「NG文」の場合、読み手に

あ、コレ織田信長の話だったん?
とわかってもらえるのは、だいぶ後半です。
これで印象づけられることもままありますが、どうにも危うい書き方です。
そこまでいく前に、読み手にウンザリされる可能性が高いでしょう。
とくに就職試験のように、試験官・採点者が大量の作文を読む場合は気をつけないといけません。
伝えたいこと=知りたいこと
弊社は新時代の製品開発を重視してまいりました。
そのため研究要員を増やし、予算面でも投資を……5年をかけて新製品「ABC」をようやく完成させました。
全国に販売網を持つ御社のご協力がぜひとも必要です。
販売に関して御社のお力があれば、いずれにとっても有益と……弊社との業務提携をご検討いただきたくお願い申し上げます。
ビジネス文書やイベントの案内状など全国に販売網を持つ御社のご協力がでも注意が必要です。
「脇役」の途中経過より「主役」の結論を優先しましょう。
それが一番伝えたいことであり、読み手が一番知りたいことです。
弊社の新製品「ABC」の販売について業務提携をご検討いただきたくお願い申し上げます。
全国に販売網を持つ御社のご協力がぜひとも必要です。
弊社は新時代の製品開発を重視して研究要員を増やし、予算面でも投資を……5年をかけてようやく完成させました。
御社のお力があれば、いずれにとっても有益と……
NGな書き出し5:ピントが合っていない

マンション適地の条件は、地盤や建物の基本構造がしっかりしていること、駅か幹線道路に近いこと、管理人が常駐していること、廊下やエレベーターの照明が完備していること、それに買い物の便や入居者同士のコミュニケーションが取れるかどうかも重要だ。
なんでも書けばよいわけではない
これは「マンションの条件」であって、「マンション適地の条件」ではありません。
「適地」はそこの土地がマンションに適しているかどうかの物理的な状態を指します。
駅に近いかといった「交通の問題」や、この文章で言えば「地盤」や「買い物の便」も含まれます。
しかし、「建物の基本構造」「管理人」「照明」「コミュニケーション」は、建物そのものや運営実態の話です。
ピントがずれています。
マンション適地の条件は、地盤がしっかりしているかどうか、駅か幹線道路に近いことや買い物の便がどうかも重要だ。
設備やコミュニケーションまで含めるなら、書き出しを
- 「マンション選びの条件」
- 「マンション全般の条件」
と改めるか、別々に書き分けます。
最初の一文を書いたあと、勢いそのままに知っていること、頭に浮かんだことを次から次へ書いていくとこうなります。
たとえ短文に区切っていても、思いつく材料をなんでも並べればよいわけではありません。