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【カクヨムgoodレビュワー厳選】おすすめweb小説5選【SF編】
どうもこんにちは、キノタダシ(@GtH4uTlfJ5mFvlL)です。
タイトルにある通り、最近読んだweb小説の中からおすすめを5作ご紹介します。
作品が公開されているサイトはいずれもカクヨム、ジャンルは「SF」です。
ネタバレは極力ありません。気になった作品は各作品タイトルのリンクからどうぞ。
おすすめSF小説① 『僕とばーちゃんと、時々彼女の島 ~僕の穏やかな島暮らしが終末を迎えるまで~』

【作品情報】
『僕とばーちゃんと、時々彼女の島 ~僕の穏やかな島暮らしが終末を迎えるまで~』
作者 武石雄由
【紹介文】
※昨今のコロナ禍を思わせる描写があります。不謹慎、不快と思われる可能性がございますのでご注意ください。
僕はばーちゃんとふたり、この島に暮らしている。
生まれてからこの方、一度も外に出たことはない。
そんな僕が知るヒトはばーちゃんと、本土から船で毎週のようにやって来る年上の少女アカリだけ。
このままずっと三人で続くと思っていた穏やかな暮らしは、一人の漂流者を発見したことから崩れ去っていく。
ばーちゃんのかつての部下だった彼は、世界中を震え上がらせたという感染症に冒されていた——
感想
「洞窟の比喩」なる話を思い出しまして。
私たちは、洞窟の中で鎖に繋がれたまま生きている。
手足はおろか、首まで拘束されているので、後ろを振り返ることもできない。
背後では炎が絶えず揺れていて、壁に映る人影を”現実”として眺めている他ない。
あるとき、繋がれているうちの一人が解放される。
振り向いて、これまで”現実”として受け容れてきたものが、炎に照らされた人形の影に過ぎぬと──世界が、洞窟の中だけに留まらぬことを知る。
この世を照らすものが、炎に留まらぬことを知る。
その”現実”を洞窟の中にいる人々に伝えるが、彼らはまるで聞く耳を持たない。
そう、元より”こう”であったものに、人は違和を抱きようがない。
第6話──オサナイの
「その事実をどう受け止めている」
という言葉に対する反応がリアルだなぁと思っていて。
然して重く受け止めるでもなし、「確かに、そう云われてみれば」とハッとした様子もない。
そりゃあ──物心ついたときから、そういう人が傍に居たのであれば「こういう人もいるのだろう」程度にしか思うまいて。
しかし、ある種の旧人類からすれば、新人類とでも呼ぶべき彼らの特徴は異質でしかなく、さりとて彼らを異質と見なす常識は旧人類が創り上げたフィクションに他ならぬのですが──。
読み通したあなたは、ぜひ2周目をおすすめ致します。
一周目の時点では違和を抱かせぬよう巧妙にカモフラージュされた伏線がいくつもあり、さながら宝探し的な面白さが味わえるのではないかと。
おすすめSF小説② 『夢見るチェリーはフレッシュな本番の夢を見るか?』

【作品情報】
『夢見るチェリーはフレッシュな本番の夢を見るか?』 作者 Askew
【紹介文】
「やっぱり、生のほうが気持ちいいんだよ」
腐れ大学生の高田はにやりと笑う。
大学のカフェテリアで生産性の無い会話を今日も繰り返す。
溌溂としてモテる高田は羨ましく、大切な友人の一人だ。でも、ひとつだけ理解できないことがあった。高田はこの仮想旅行が発達したご時世に、生にこだわるのだ。どうしてわざわざ飛行機に乗るかと聞くと、最初の答えが返ってくる。
俺はそんな友人をどこかバカだと感じているのも事実。
『十分に発達した仮想現実は生と見分けがつかない』
その言葉を胸に、俺は今日も旅へ出かけるのだった。
感想
初めて読了したとき脳裏に浮かんだのはいつぞや『クローズアップ現代+』でやっていたVR特集でして。
番組の中でゲーム研究会の東大生と歌舞伎町のホストが『サマーレッスン』っていうVRゲームをプレイするんですよ。
『サマーレッスン』はプレイヤーが家庭教師になって教え子のJKとコミュニケーションを図れるっていうね、”コミュニケーション”という言葉が押さえているところの幅広さを改めて痛感できるゲームなんですけど、体験したうちの一方が
- 「(JKの)吐息が聞こえた」
- 「息遣いが聞こえた」
とコメント(ここだけ抜き出すと些か供述チック)しておりまして。
コレどっちの感想かと云うとホストの方なんですよ。
東大生とホストじゃ、当然後者の方が女性との面識は多いじゃないですか。
で、人間は基本情報収集の大部分を視覚に頼ってる。
だから、

こんなガチ恋距離に女の子がいるのに息遣いの一つも聞こえないのはおかしくね?
って経験値から(ここ重要)判断した脳が聴覚やら触覚やらを補完した結果、ありもしない息遣いを感じたのではないか──とのこと。
こういう錯覚をクロスモーダル現象って云うそうなんですが、ここで強調したいのは東大生──女性との面識が少ないであろう彼にはそれを感じ取ることができなかったという事実でして。
つまり、現状のVR技術では女性経験豊富なヤツの方がよりその手の仮想体験に没入できるという残酷な現実が突き付けられたわけです。
何だよ非モテはこんなところでさえ経験値の差を見せつけられなくちゃいけないのかよイヤ哀しいもう寝る──と今まさに不貞寝しようとしているそこなあなたに朗報中の朗報。
なんとこの作品では、触覚どころか味覚をも含む五感の再現技術がすでに確立しているのです。
本作、端的に云えば主人公・添島学(二十二歳童貞)が”仮想旅行”をするお話なのです。
先に触れた話題と二十二歳童貞という添付情報のせいで”仮想旅行”という響きが些か卑猥に聞こえるやもしれませんが、断じてそういうトリップではございません。
で、こういうもはや現実と区別がつかない──ハイクオリティな仮想体験が当たり前となっている世の中には、
「それでもやっぱり”生”がいい」
と主張するリアル志向者もいるわけでして。
十分に発達した仮想現実は生と見分けがつかない──。
だったら私たちが現実だと思って生きているこの今さえも実はシミュレーションなんじゃね?
人間どころか宇宙全体がそもそもシミュレーションなんじゃね?
などと何やらデケデケデン♪ デケデケデン♪ という世にも奇妙なBGM(と手拍子)がお似合いの思考に耽る度、私は物理学者ゾホレ・ダブディ氏のあの発言を思い出すのです。
シミュレーションであれば必ず伴う性質に起因する、ある物理的制限を計測──発見できてしまえば、私たちの今いる世界は現実ではないということになる。えっ、それって怖くね? という質問に対してダブディ氏はこう答えています。
「ちっとも。むしろ楽しくなるアイデアね」
確かに楽しいか楽しくないかで云われれば、結構楽しくなりそうな話ではある。

感覚の再現技術を利用した“仮想旅行”をモチーフにした作品と云えば、伴名練先生の『chocolate blood, biscuit hearts.』を思い出します。
あっちはゼロから構築された仮想現実ではなく、切り取られた他人の体験──という違いはありますけど
おすすめSF小説③ 『人類の遺言』

【作品情報】
『人類の遺言』 作者 辰井圭斗
【紹介文】
巨大隕石サギッタが地球に衝突するまで三年を切った。
衝突回避の方策は絶無。
NASAは月に人類の遺言を残すため奔走する。
感想
物書きに人類滅亡を題材にした小説書かせたら大体パーソナリティ分析できる説をひそかに提唱しておりまして。
人類滅亡と一口に云ってもその終焉に至るパターンは多種多様じゃないですか。
たとえば時間にフォーカスすると今すぐにでも滅びるのか、近日滅びるのか。
場所にフォーカスすると静寂のなか滅びるのか、喧噪のなか滅びるのか。
原因にフォーカスするとそれは抗いようがあるのかないのか。
あとは──ひとりでそのときを迎えるのか、誰かと一緒に迎えるのかとかね。
件の作品、
巨大隕石サギッタが地球に衝突するまで三年を切った。
ところなのですよ。
3年って結構遠くに感じるじゃないですか。
日数にするとたった1095日なんですけど。
だから、どちらかと云えば静寂のなかで、原因は隕石なので実質抗いようのない部類に入るのでしょう。
残すは誰と過ごすか──なのだけれど、ここが件の作品の面白くも狡いところだと私は思っていて。
というのも、人類滅亡まであと”3年”なのですよ。
「明日人類が滅亡するとしたら誰と過ごす?」って訊かれたら私らそこそこ真面目に考えますよね?
けど、「3年後人類が滅亡するとしたら誰と過ごす?」って訊かれたら一瞬耳疑いません?
人によっては「いや、仲さえ悪くなかったら誰でも」って答えそうじゃないです?
そこがね──ちょっと狡いなと。
ああ、そこは教えてくれないんだと。
人類滅亡を題材にした群像劇において、往々にして恋人・夫婦の描かれる作品が多い中、この”人選”もらしいと云えばらしいかなと。
云うて、作品から読み取れる作者のらしさにも当然限界はあるので。
人類滅亡をテーマに静寂な死を描いたところで、現実は

パーティーの中で死にてぇ。
シャンパンタワーカマしてから死にてぇ。
夏桀殷紂に名をねじ込めるレベルの酒池肉林の限りを尽くしてから死にてぇ
と心に決めている方だっているかもわからんし。
「でもさ、ある意味愛しかったよね」
ある意味って日本語の中で一二を争うレベルで便利な言葉だと思うのですよ。
ある意味って頭につけられたら、なんとなく同意せざるを得ない空気感あるじゃないですか。
でも、このある意味って言葉にできないというよりは、言葉にするまでもないでしょ──みたいな意味合いが込められているようにも思うのですよね。
ぶっちゃけ駄目じゃなかったら素直に愛しい──とも云い切れないじゃないですか。
だから、ここまで長々と書いておいてアレなのだけれど、この”ある意味”が一番らしいと思えたのだ。
ある意味ね。
おすすめSF小説④ 『11月はとばりの国』

【作品情報】
『11月はとばりの国』 作者 たけぞう
【紹介文】
宇宙船「メメント・モリ」で孤独に旅を続けるレレィア。
ある日、鍵のかかった自分の私室で、男の他殺体を見つける。
彼女の一人旅は、謎の死体のヒッチハイクによって急展開を見せ始めるがーー
万華鏡のように移り変わる過去の景色。
不死の一族と死との歩みは、やがて宇宙の彼方に届く。
Twitter発企画・ノベルバー参加作品
引用:『聖書 新共同訳』
感想
正直に申し上げると、物語を追っているというよりは文字を追っている印象。
書き出しが
鍵を九十度回すことで、レレィアは自らを閉め出した。
という一節ではじまるのですが、それ以降の読者閉め出されている感と云いますか、作品の殻に閉じこもっている感すさまじいな──と。
読んでいると、等速で流れゆく景色をただただ傍観するほかない──みたいな感覚に陥るのですよね。
エピソード単体で見るとそれほど閉め出されている感はないのですが、通しで見ると「一瞬寄り添ってくれている気がしたけど、やっぱ気のせいだったかな?」とつい首を捻りたくなります(笑)
それでも、最新話まで読ませる牽引力がありました。
何かこの感覚を読み手に植えつけたまま、最後まで突っ走ってくれるんだろうという謎の安心感があります。
京極夏彦先生が『見えない世界の覗き方: 文化としての怪異』のなかで、
物語というのはつねに読む側に発生するものだとぼくは思っています。
書き手としては、いかに縦横無尽に読み解けるテキストを提供できるかが勝負なんだろうと思うわけです。
書き手から意図的にメッセージを発信する、発信できると、ぼくはあまり考えていません。
とおっしゃっているのですが、これに近しいものを感じました。
多岐に渡る解釈が可能なテキストという意味で、まさしく小説やってる小説ではないでしょうか。
おすすめSF小説⑤ 『シャーロット恒星間飛行船』

【作品情報】
『シャーロット恒星間飛行船』 作者 @Pz5
【紹介文】
複素空間航法の発達により、誰しもが恒星間移動が可能になった時代。「銀河のバミューダトライアングル」と呼ばれる宙域では「セイレーンの歌声」が聞こえる現象が起きていた。その起源を知る「橋守」が語り始める、宇宙ゴシックロマン。
感想
第一回遼遠小説大賞をきっかけに出会った作品。
「バミューダトライアングル」「セイレーン」といったそっち方面に疎い読者でも何となく知っている、何かしらを連想できてしまうワード選びと良い意味で古典的な、予想を大きく裏切ることはないが期待にはきちんと応える展開が相まって(私のような)SF初心者にもとっつきやすい。
SFというワードに忌避感覚える層がこの記事を読んでいる可能性は皆無でしょうが──そういう人にこそ読んでほしい、複数の時代が融け合っているかのような一作。
余談。セイレーンは元々のギリシャ神話では上半身が女性、下半身が鳥の姿をした怪物として描かれているのだけれど、後世では下半身が魚──人魚の姿で描かれていることが多い。
この辺りの変遷理由としては、山田五郎氏の「外洋に出るようになって恐怖の対象が変わった」説が面白い。
古代ギリシャの頃──せいぜい地中海をウロウロしていた頃は岩礁、その周辺にいる海鳥が船乗りにとっての凶兆だったのだけれど、外洋に出るようになってからは果てのない海こそが恐怖の対象となった。そこに人魚伝説が融合して、セイレーン=人魚のイメージが定着したのではないかとのこと。
ちなみに自分史における「セイレーン」の初出は多分FF8だったと思うのだけれど、そう考えるとゲームに限らず、「アキレス腱」や「ヘラクレスオオカブト」などといったワードで自然と日常に溶け込んでいるギリシャ神話の生存力って凄まじい。
他のおすすめweb小説が気になる方へ
他のおすすめweb小説が気になるという方はこちらからどうぞ。
作品が公開されているサイトはいずれもカクヨムです。
気になった作品は各作品タイトルのリンクからどうぞ。
まとめ:おすすめweb小説を読む前に
最後にお決まりの文言を張って締め括りたいと思います。
本体は上記リンク先の「作品」であり、当ブログはあくまでオマケです。
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それが、書き手の明日の糧につながるかもしれません。
ここまでお読みいただきありがとうございました😌
また、もし「自作を読んでほしい」「自作を知ってもらう機会をちょっとでも増やしたい」という方がいらっしゃれば、コメント下さい。作品を読みにうかがいます(カクヨムであれば評価も行います)。
ただし、読んだ作品を100%紹介させてもらっているわけではないので、その点ご了承くださいませ。
ではまた~。