- web小説はどちらかと云えば、純文学や現代ドラマ等のマイナージャンルが好みだ
- いわゆる「なろう系」を除いて、面白いネット小説を探している
- 面白いネット小説を書く作家さんを知りたい
【カクヨムgoodレビュワー厳選】最近読んだおすすめネット小説7選
どうもこんにちは、キノタダシ(@GtH4uTlfJ5mFvlL)です。
タイトル通り、最近読んだネット小説7作品を紹介します。
作品が公開されているサイトはいずれもカクヨム、ジャンルはバラバラです。
管理人の趣味嗜好上、現代ドラマや純文学といったマイナージャンルが中心となるため、昨今ブームの異世界系などを求めてここにたどり着いた方は肩透かしを食らうかもしれません。それでも良ければお付き合いくださいませ😌
ネタバレは極力控えています。気になった作品は各作品タイトルのリンクからどうぞ。
おすすめネット小説① 『メルカトルワールド』

【作品情報】
『メルカトルワールド』 作者 ドラ・焼キ
【紹介文】
整序されたカオスで、彼らは何を選ぶのだろうか。
二万年前、かつて鉄と火と言霊の文明が栄えていた地球は、その持ちうる文明すべてを自壊に尽くした。そこかしこに火が満ち、爆炎は星核すら砕いたという。
そこで救世神話を紐解けば、「大神アルゴルはこれを救済した。彼は『地球展開』――星を平らに再形成し、『幻想漏出』――神秘の力・『幻想』をもたらしたかわりに、『災火封印』――あらゆる近代兵器を人類から没収し、最後に人類の存続権を試すべく、この世に『ケモノ』を放った」とある。
そして現在、救世暦20020年、世界は4つの生存地域に小国を一つずつ構えるのみとなった。ほかは、ケモノに占拠され人っ子一人残らない。しかし同時に人類の防衛技術も十分向上し、世界は再び広がりも狭まりもしない停滞の時を迎えていた。
感想
『14. 正しくなれない②:ローナの堪忍袋の緒』読了。
人間関係の不和が先立ち過ぎて、もはや実地試験どころではない気がしてきた。
前々から感じていたことですが、ドラ・焼キさんはキャラの書き分けも然ることながら性別の書き分けが巧い。
特にツイッターで引用した部分は、紛うことなき男あるあるである。
やや言葉遊びめいた表現だけれど、男と女が揉めているときは本当に男と女が揉めているし、女と女が揉めているときは本当に女と女が揉めているのである。
この手の異世界ファンタジーでこういった対人関係の不和にフォーカスする展開は、ともすれば「早く話を進めてくれ」と外野からツッコミを受けそうなものなのだけれど、件の作品の場合、むしろこれでガンガン進んでいる──と私は思うので。
そういったところも含めて、つよい。
同作者様の別作品について、下記リンク先でも紹介しております。よろしければ。
おすすめネット小説② 『電動骨董紙。―エレクトリックパピルス・オンライン―』

【作品情報】
『電動骨董紙。―エレクトリックパピルス・オンライン―』 作者 五水井ラグ
【紹介文】
若者たちは魔法の鍛錬や狩り、研究などの現実をそっちのけにして、「魔法が無い架空都市」のオンラインゲームに夢中だった。
魔法社会で爆発的な広がりを見せるVRMMO「エレクトリックパピルス・オンライン」。
とある魔法使いの少年は願っていた。できることなら永遠にこのゲームのなか――架空都市トウキョウで生きていたい。
◆
隣の席の男子はよく分からない嘘をぽこぽこ作り続けてはあたしに話した。魔法。狩り。NPC。ゲーム。そういう妄想でしか生きられない隣の男子とのひと夏。
◆
毎週日曜20時頃更新予定です。
公開 2021/02/06
感想
『1-03.』読了。
本降りに至るまで、ある程度行儀よく雲行きが怪しくなるのだろうな──と勝手に踏んでいたら、スコールに晒された。
でもって、ひたひたしている。そんな読後感。
何故に「ある程度行儀よく雲行きが怪しくなる」と踏んだのかと訊かれたら、単純に連載小説だったので。
短編という形式ならまだしも、タグにある「毒親」「虐待」といった要素はじわじわ小出しにされてゆくのだろうなぁ──と。
かと思えば『1-03.』にして、早くも堰を切る様が描かれたわけで。
それゆえ、「もうこれを書いてしまうのか」と惹きつけられるものがありました。
『ストロベリーポップキャンディー。』を読んだときから思っていたのだけれど、荒れ模様が似合う作家さんだと思う。
「雨を表現するのが巧いよね」とかそういう月並みなニュアンスとはまた違って、荒れ模様が似合う。
解釈は任せる。
おすすめネット小説③ 『死霊』

【作品情報】
『死霊』 作者 辰井圭斗
【紹介文】
残酷・暴力描写あり。
ある意味ボーイミーツガール青春異能もの。
感想
10代の頃戦っていた敵は何か──と問われたら、言語化は可能だし、なんなら今そういうテイストの話を書いているのだけれど。
それでもやはりこの年になると、あの頃何と戦っていたのかなんて「よくわかんねぇ」のである。
わりかし詳細に憶えている方だとは思うのだけれど、あくまで解った気がしているだけに留まると云うか。
よって、創作世界の十代が「よくわかんねぇ敵」と戦いがち(というより戦わされがち)なのはある種宿命だったりする。
余談だが、拙作『黒ノ都』は青少年が「よくわかんねぇ敵」に存在を脅かされるからこそ面白いのであって、敵の素性がオープンになったら途端に陳腐化するのでは? と戦々恐々している。
脱線御免。
港田くんがあそこでバグらなければ、「テストオワったわ」と笑えるような人間なら、それは果たして今しなければならない質問なのかと自問しつつ、あれは鹿山がやったのか、どうやっているのかと聞ける人間だったら(そして鹿山さんが美人で、テスト当日に英単語を詰め込まなくても済むタイプの人間だったら)。
あるいは何かが変わったのかもしれないけれど、そのいずれかがクリアできた時点で、それはもう港田くんと鹿山さんではないと思うので。
この二人だからこそ、漕ぎつけたエンディング感はある。
そう考えると、特別“らしい”要素がなくたって人は誰でも主人公になれる! というすこぶるポジティブなメッセージを含んだ作品に思えてきたのですが、いかがか。
おすすめネット小説④ 『コンビニとルーティン』

【作品情報】
『コンビニとルーティン』 作者 山田湖
【紹介文】
これはコンビニでアルバイトしている「俺」とその客の物語。
初めてこういうのを書いたのでおかしいところが有れば遠慮なく言ってください。
感想
当初「同じような感じがした」からとはいえ、一度コンビニで顔を合わせたことのある相手にここまで云いづらい情報を開示できるだろうか──とやや違和を覚えたものの、その点については他ならぬ“俺”も「転んだか自転車か車とぶつかったといった答えが返ってくるかと思った」といった反応を予想しており、それを裏切られる形と相成ったわけなので。
“俺”にとって女子高生の「他とは違う感」が増した、まさにボーイミーツガール的話運びだなぁと(考えてみれば今後顔を合わせる機会があるかどうか、確証の持てない相手だからこそ打ち明けられる胸の内──というのもあるでしょうて)。
とどのつまりは、良きボーイミーツガールだったと云いたい。
劇中、あくまで“俺”と女子高生は「お互いの名前も知らない関係」を貫き、そこに恋愛感情が介在しているかどうかは読者に委ねる──という幕引きだったのだけれど。
“俺”と女子高生の関係を「希望と行動によって結ばれた人たち」と捉えた読者もいれば、飛躍して「愛によって結ばれた人たち」と捉えた読者もいるかもわからんし、その解釈を委ねるというスタンスをアンドレ・マルローの名言に忍ばせるあたり粋だなぁなどと思った。
おすすめネット小説⑤ 『首吊りいふか』

【作品情報】
『首吊りいふか』 作者 辰井圭斗
【紹介文】
なし
感想
『最終話』読了。以下、感想──というより、ほぼほぼ独りごととしてさらり流してもらえたらこれ幸い。
「たった一人に喜んでもらうために書くのはお遊びで、たくさんの人に喜んでもらいたくて書くのは遊びじゃない」みたいな台詞を某自作で書いたのだけれど。
「書きたいものを書く」ではなく「本当は然して面白いとも思っていないが、需要があるから書く」というスタンス、至極賢明だとは思う反面、それを“助言”として口外し出すと途端にダサくなるよなぁと。
自分はまだ本気でしてないだけ、真に書きたいものを書いたら皆が目を瞠るものが書ける──みたいな強がりが透けて見えるというか。
そう考えると、私書きたいものを書いてますと前面に押し出すスタイルってある意味その逃げ口上を断ってると云えるのかもなぁと。だから──この云い方はちょっとアレなのだけれど「書きたいものを書く」ってそこに評価されるされないという微々たる違いはあれど「自分はこれと共に死ぬ」というある種の決意表明なのかもなどと思った。
とどのつまり、かっこいいものを書くなぁ──と読み終わって思った。
何遍か読み返してみたけど、伝えたい言葉としてはそれで足りるかなと。
「フローリングの床を成人男子の重みが移動してきて」とか「深夜の最後の空気」とか、ひたすら独自性にフォーカスした描写から漂う「未踏の地にたどり着きたい感」が好き。
おすすめネット小説⑥ 『古書屋の鞄』

【作品情報】
『古書屋の鞄』 作者 倉沢トモエ
【紹介文】
古書市の日、集まる人々との語らいを楽しんでいた魔女は、子供たちに紙飛行機を指南する、鞄ひとつの古書屋の姿に気がつく。
「鳥籠には鍵がある」と同じ町が舞台です。
※全2話
感想
まず、目を瞠ったのが冒頭の老紳士と魔女のやりとりで。
お互い動作に関する描写がないのですよね。台詞の合間には、老紳士と魔女の素性のみ。にもかかわらず、行間から二人の立ち振る舞いをすんなりイメージすることができます。
殊更面白いと感じたのが魔女の「ああ、こちらを」の台詞のあとで。
よくある構成であれば次は「可愛らしい紙」の説明に移って良さそうなものなのだけれど、やってくるのは「魔女は、古書市の客を目当てに店を出す、紙屋に用があったのである」という“経緯”。それでも、文脈からこの場で「紙」が提示されたのだろうな──ということはわかります。
これこれこうしましたという動作の詳細が描かれていないのに、違和なく脳内補完ができる。
とどのつまり、読者に伝えたいことと伝えなくても良いことの書き分けがはっきりしている、読んでいてつまづきを覚えることのない洗練された文体だなぁ──と。
第2話で印象に残ったのは小鳥が紙飛行機をついばむシーン。
これまた動作の描出で勇猛さをアピールするのではなく、端から「最も勇猛な青い小鳥」って書いちゃっているのですよね。
この描き方が何やら童話的で面白いなぁ──と思いまして。
「三兄弟の中で最も賢い二番目の王子」とか書かれたら「二番目の王子が最も賢いんだ」ととりあえず受け入れるじゃないですか。どう賢いのかという記述がなくとも。
無論作風によっては動作を介して勇猛さを伝えた方が良いケースもあるのでしょうが──本作に限ってはやはり「最も勇猛な青い小鳥」という語りこそ最適解かなぁと。
兎角、余分なものを付け足さない。読者の読み進める目を失速させない、伝えたいことと伝えなくても良いことの線引きが非常にお洒落な作品でした。
感想:追記 2021年7月26日
読み返して吃驚するほどストーリーに触れていなかったので少しだけ。
助けられた側のポジティブなメッセージが違った角度から助けた側に届くという展開が好きでして。この場合は「すごかった、魔女様」や子供たちの拍手がそれに当たるのですが。
子供たちの「すごかった」は、当然「触れればかならず傷となる。地に落ちれば毒となる」紙飛行機から自分たちを守ってくれたことに対する謝意を含めた賛辞──ではなく、あくまでパフォーマンスとして「紙飛行機のあそび」を披露してくれた魔女に対して「すごかった」という言葉を送っているのですよね。
こういう本来届くかもしれなかったポジティブなメッセージが、違ったニュアンスを込めて届く展開ってやはりお洒落だなぁと。それだけ言及しておきたかったので、追記しました。お目汚し失礼。
おすすめネット小説⑦ 『裂果』

【作品情報】
『裂果』 作者 杜松の実
【紹介文】
茅蜩だ。風死せる夕影の土間に二人の男が立って居るのを知らず、ただかなかなと鳴く。彼らは屋敷を潮気と砂粒から守る木立に掴まり待っているのだ。これが明治最後の夏となるやもしれぬと、暗に歌うのだろう。
感想
読み手が容易く映像として想像することをいっそ拒んでいるのかと疑うほど、時代小説さながらの語句が敷き詰められる一方、交わされる会話のトーンはどうやら近現代のそれで。
会話の節々から読み取れる二人の背景は少なく、それでも共に月を見上げる間柄ではあるのだと。それこそやや遠いところでただかなかなと鳴く、茅蜩にでもなったかのような読後感でした。
その後、「注解」にある「わたしのすきなことば」にたどり着いて。なるほど会話の節々から物語を紐解こうとした自分は確かに読者として“優しかった”かもしれないな──などとややメタな読みですが(笑)そんなふうに思ってしまいました。何ならこれを打っている今も、鈴虫の声を聞きながら平素より優しい気持ちになれている──やもしれません。
「秘密が多い方が 優しくなれるかも」
心に留めておこうと思います。
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作品が公開されているサイトはいずれもカクヨム、ジャンルはバラバラです。気になった作品は各作品タイトルのリンクからどうぞ。
さいごに:おすすめネット小説を読む前に

今回の紹介を読んで、ネット小説にちょっと興味が湧いたぞ!
という方向けに、いつもの文言で締め括りたいと思います。
本体は上記リンク先の「作品」であり、当ブログはあくまでオマケです。
作品を読んでちょっとでも「面白い」と思ったら、フォロー・評価をよろしくお願いします。
それが、書き手の明日の糧につながるかもしれません。
ここまでお読みいただきありがとうございました😌
また、もし「自作を読んでほしい」「自作を知ってもらう機会をちょっとでも増やしたい」という方がいらっしゃれば、コメント下さい。作品を読みにうかがいます(カクヨムであれば評価も行います)。
ただし、読んだ作品を100%紹介させてもらっているわけではないので、その点ご了承くださいませ。
ではまた~。